世界は本当に広い ― とある日曜日の食卓

 ラグビー留学をしている息子が、ニュージーランドのあるご家庭にホームステイをしています。そのホストファミリーでは、毎週日曜日の夜になると、家族全員が集まって一緒に食事をするのが習慣だそうです。


 先週の日曜日も、特別なことがあったわけではなかったのですが、その日の晩ごはんには、庭で飼っている羊を料理することになったそうです。 ホストファミリーのお父さんが一頭の子羊を捕まえると、一瞬で屠殺(とさつ)して、吊るし、そして素手で皮を剥いでいったとのこと。 その様子を、息子はすぐに動画で送ってきて、興奮した様子で電話もかかってきました。「とにかく一瞬だった。あっという間に命が終わって、食べる準備が始まったよ」と。


 動画には、SNSでは見たこともないような光景が映っていました。


 東京で暮らしていると、スーパーに並んだパック詰めの肉しか見ません。でも、あちらでは命を自分たちの手でいただき、家族で囲んで食べるという暮らしがある。それが日常であり、特別なことではないということに、あらためて驚かされました。 世界は本当に広いですね。そして、私たちが当たり前と思っていることが、実はとても限られたものなんだということを、息子の声と動画が教えてくれました。